【呪術廻戦】アニメ勢による2期 第33話「渋谷事変 開門」の感想など【夏油についての考察多め】

 9/21(木)に呪術廻戦2期第33話が放送されました。いつも通り、アニメ勢の筆者が感想や考察などを語っていきます。

※下記より、アニメ呪術廻戦・アニメ放映分の単行本のネタバレ及び、筆者の感想&考察要素を含みます。※

参考)単行本で言うとどの部分か?

単行本10巻 第84話 渋谷事変②p.105

      第85話 渋谷事変③のp.124まで

      第88話 渋谷事変⑥のp.175までとp.177以降

単行本11巻 第89話 渋谷事変⑦

      第90話 渋谷事変⑧

      第91話 渋谷事変⑨ p.52の上2コマ目まで

ファーストインプレッション

 こ~れはヤバすぎる。怒涛の展開…というか話の密度がとんでもない。前回までは「渋谷事変って結構ゆっくり目に進むのかしら」と思っていたら、突然いろんなことが起きてアニメ勢の筆者は呆然としてしまった。上にもまとめているが、話数でいくと約4話分も詰まった超ボリュームである。色々思う事はたくさんあるのだが、多すぎて訳が分からんという感じである。セルフ無量空処状態だ。

 初っ端のあからさまなフラグ立てで動揺するも、それを忘れるくらい強い&怖い五条先生。あんなに強かった花御が、五条の術に押し潰されて形も残らず消えてしまったのだ。正直、化け物じゃんと思ってしまうくらいだった。そして嫌なタイミングで真人が合流し、混乱極まる状況。五条の無量空処からのシーンは、狂気じみていてどこかHUNTERxHUNTERのヒソカっぽさを感じた。途中の夏油らの作戦シーンでは、前回のシャボン玉に続き今回は麻雀をしている。またこの人達遊んでるよ…と思いながら見ていると、ここもなんだかNARUTOのシカ丸が父親と将棋をするシーンを思い出した。きっと麻雀が分かる方にとっては、台詞や込められた意味をより深く理解することができるのであろう。今までの人生でこれほど麻雀の知識を欲した事はない…。

 そしてついに来てしまった獄門疆の出番。封印条件の1分間に、自身の存在を利用する夏油。そして一言めは「や、悟。久しいね」と来た。筆者が一番恐れていた言葉だ。策士も策士である。動揺する五条、そして脳内に駆け巡る夏油との思い出。条件が満たされ封印が開始される。先ほどまでは、5分も満たない間で領域展開をし、更に非術師たちを考慮しながら&呪霊の攻撃に備えながら、1000体の改造人間の末梢を実行した切れ者の五条だったが、夏油の声や姿を認識した瞬間思考がピタリと止まってしまうのが五条の人間らしさが感じられてすごくよかった。「ごめん、全員は助けられない。その代わり絶対祓ってやる」という台詞はかっこよすぎて倒れそうになる。

 そして気になっていた夏油が本物か偽物なのかについても明らかになったが、ここの櫻井孝宏さんの演技が堪らない。筆者はアニメ1期の時点で夏油が好きだったのだが、一気に気色悪いなと思ってしまった。趣味の悪い敵だとしか言いようがない。恐らく、肉体に宿る記憶なども利用しているのだろうが、偽物の分際で五条のことを「悟」と呼ぶ姿には虫唾が走る。五条は怖いし強いし、夏油(偽)にも利用されてるしで漏瑚をなぜか応援したくなってしまうような不思議な気持ちになった。

 そして最後は唐突に虎杖の耳元に張り付くミニメカ丸。突然すぎて「なんでだよ」とちょっと笑ってしまった。こういう所があるので呪術廻戦は油断ならん…。というかメカ丸どういう状況なの?!とわたわたしているところでアッという間にエンディングを迎えた。

 今回、五条の荒っぽい所や熱い部分が前面に出ていて面白かった。戦闘中の狂気じみた顔や声、夏油と対峙した際に声を荒げて一人称も”俺”に戻っている所を見ると、彼の本来の荒々しい部分というのは前から変わっていないのだなと気づかされた。教師をやっている手前、へらりとしてみたりして人当たり良さそう(?)にはしているが、内面は高専時代のままなのだな~と。親友である夏油の声や姿を認めた瞬間足を止めてしまうところや、「俺の魂がそれを否定してんだよ」と声を荒げるところ等からも、五条の”情”を強く感じられた。2期になってから五条の人間性に触れられることが多くなったので嬉しいものである。とりあえず今回を見た後、筆者にとっての五条悟には「実は熱い男だが、まじでおっかないヤバい人」という要素が加わった。ほんと怖かった。

出典:TOHO animation チャンネル, TVアニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」第2期PV第3弾(URL: https://youtu.be/PKHQuQF1S8k?si=DhwVjHwoKOZTPnUY)より

ストーリー構成

 前回の第32話と併せるとかなり構成はアレンジされている印象だ。アニオリ要素はほとんどなかったように思う。

シーンごとのメモ等

・アバン:アナタにとって五条悟とは?

 初っ端から「Q アナタにとって五条悟とは?」という文字がでーんと出てきてびっくりした。そして虎杖からはじまり、恵→野薔薇→2年→七海→東堂の順でそれぞれ一言ずつ喋る形で、「え、突然特大フラグが出てきたんだけど…」と困惑。だがしかし皆かわいい。絵の色味もエンディングのテイストに近く、アスペクト比も3:4で素敵な演出だ。恵が「一応恩人です。”一応”。」の時に眉をひそめる表情が何とも言えなくて色々考えさせられる。

 皆に最強と称され、特大フラグを抱えてすぐに渋谷駅の五条の様子が映される。足元に改造人間が散らばり、酷く息切れを起こしている。PVで何故ため息を吐いているのだろうと気になっていたシーンだ。まさか息切れをしている五条だったとは…。非常に消耗している様子で、一体何が起きてこんなに疲労しているのだろうと心配になってきた時点でオープニングとなる。ここの五条の息切れの演技もすごい。上がる息を治めるように、深く息を吸って吐く感じがリアルだ。中村悠一さん流石である…。

・Aパート:五条vs漏瑚&花御&脹相

 「そこの雑草、会うのは3度目だな?ナメた真似しやがって」「まずはオマエから殺す」という台詞から始まるAパート。五条先生のぶちギレモード、怖い…。狂気じみた笑みや真顔、声のトーンや話し方まで全てが怖すぎる。もう素の戦闘力だけでも特級呪霊達には敵わないというのが明白で、ちょっとかわいそうにすら思えてくるほどだ。術式を使おうとする花御にターゲットオンする五条の顔、夢に出てきそうなくらいの悪人面である。主人公サイドの顔とは思えない程おっかない。そして花御の目元に生えている樹を引っこ抜く姿には震える。「五条悟、逆に貴様は何を持ち得ないのだ!!」という漏瑚の台詞には、ほんとそうだよな!と思いつつ、なんかもう漏瑚たちが不憫になってくる。戦闘シーンの作画も物凄い。特に、空中で漏瑚を花御に投げつけるカット、壁に着地する花御、壁に着地する五条、花御に襲い掛かる五条 辺りの流れや動きがとんでもない。何度も巻き戻して見てしまう。

 漏瑚と花御が展延で五条に攻撃をしかけるも、「いいのか?オマエが展延で僕の術式を中和する程、僕はより強く術式を保とうとする。」「そっちの独活はもうそれに耐える元気ないんじゃない?」と言い、漏瑚に背を向け花御により一層の圧をかける五条。笑いながら迫ってくる様には、もう悪役どっちだっけ状態だ。漏瑚が「五条悟!!こっちを見ろ!!」と叫んで気を引こうとするも、見向きもせずに花御をそのまま押し潰しあっけなく祓ってしまい、そしてゆっくり振り返って「次」と呟く五条先生…リアタイ時も思わず「こわ…」と声に出てしまう程だ。五条先生が味方サイドの人間で本当によかったと思う瞬間だった。それにしても、五条の前では特級呪霊たちも赤子のように無力だ。夏油のアドバイスがあったからそこそこ戦えたものの、もし夏油から色々聞いていなかったら瞬殺だったであろう。

・Aパート:夏油らの作戦会議

 突然麻雀が始まる。前回はシャボン玉で今回は麻雀で、君達何遊んでんねんとツッコみたくなる。恐らく麻雀の打ち方?にも思惑が隠れているはずなのだ。麻雀をやったことのない自分をこれ程まで悔いたことはない…。

夏油「獄門疆は生きた結界。源信の成れ果て。獄門疆に封印できないモノはない

漏瑚「だが流石に封印条件はあるのであろう?」

夏油「1分だ」

漏瑚「は?」

夏油「獄門疆開門後、封印有効範囲半径約4m以内に、1分間五条悟を留めなければならない

漏瑚「おい、焼き殺すぞ。よもやその無理難題を押し付けるために手を組んだのではあるまいな?」

  「その条件下でアレの1分。蒙昧な人間共その一生を幾千積み重ねても釣り合わんぞ」

夏油「暑いよ漏瑚。大丈夫、1分と言ってもね」(単行本11巻)

 夏油から聞いた封印条件に、「焼き殺すぞ」と怒る漏瑚には、その通りだよな~と頷いてしまった。1分の攻略方法は夏油自身にあったのだが、20分五条の足止めをさせられただけでも漏瑚たちは無理難題を押し付けられたと言ってもいいだろう。夏油の「大丈夫」の言い方も半笑いで、適格に神経を逆撫でしてくる…。胡散臭くて怪しい夏油のいいなりになるしかなく、それによって五条の攻撃を最前線で受けなければならなくなった漏瑚たち。おっかない人達の板挟みになってしまって可哀そうだ。これもしかしたら、良い感じに弱った漏瑚たちを最終的に夏油が取り込んで完全な手駒にする線もあり得るのでは。

・Aパート:五条vs漏瑚&脹相

 五条から逃げて距離を取りながらどうにか足掻く漏瑚と、無表情でゆっくり歩きながら近づいてくる五条。BGMも相まってホラーかなと思うほど。ホームドアに上がる動きも(足から着いて、後から上半身を持ち上げる)、いちいち怖い。漏瑚に急かされ渋々と言った様子で応戦する脹相に、あ~そういう感じなのかと思った。脹相がどういう立場なのだろうということについては、考察パートで後述する。脹相の技を弾く五条は心底ウザったそうな表情だったし、「コッチの狙い、近接フルボッコはもう晒したし」等の言い回しからも五条の荒々しい一面が見られて大変嬉しい。

 そして、思わず「うわ、かっこいい」と声が出たのは「ごめん全員は助けられない。その代わり絶対祓ってやる」というシーンだ。そして地下鉄の線路奥でほくそ笑むのは夏油だ。「まだまだ、五条悟全然余裕じゃん。もっとヒリヒリしないと」の言い方もめちゃくちゃ腹立たしくて良い。あんたは裏で自分の出るタイミングを伺ってるだけでいいよな!漏瑚たちめっちゃ頑張ってるんだぞ!!という気持ちになる。

出典:TOHO animation チャンネル, TVアニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」第2期PV第3弾(URL: https://youtu.be/PKHQuQF1S8k?si=DhwVjHwoKOZTPnUY)より
・Aパート:虎杖サイド

 ところ変わって虎杖サイド。明治神宮駅のホームに着いて、たった一人しゃがんでいる女性に声をかける。「みんな化け物になって電車に乗って行ってしまった」と告げながら改造人間に成り代わってしまう様子はなかなかえぐい。虎杖が女性の言葉から、渋谷駅にいる五条を案ずる。察しが良くて頼もしい。

・Aパート:五条vs漏瑚&花御&脹相、そして真人合流

 そして嫌な予感は的中し、真人と改造人間が乗った電車が渋谷駅に到着する。いや~な空気の反面、何も知らない一般人たちは安堵した声をあげていて、それがより一層不穏さを助長させているようだ。「来たな」という漏瑚はホッとした様子で、本当によくここまで粘ったなと労う気持ちが湧いてくる。ホームがより一層の混乱で満ちてきたところで電車から降りてきたのは、るんるんな真人だ。真人と漏瑚のやり取りを見ていると、苦労人お爺ちゃんと破天荒な孫の会話を見ているようでなんか調子が狂う。「花御に怒られるよ」「花御は死んだ」「……マジ?」はちょっぴりギャグテイストで、呪術廻戦のテンポだな~という感じだ。

・Bパート:五条vs漏瑚&花御&脹相&真人+改造人間

 改造人間たちが一般人に襲い掛かり状況が悪化する中、真人は五条に攻撃をしかける。噂通りなのが分かって面白いといった具合で「マジで当たんない!!」と言う真人は楽しそうだ。花御が蓋をしていた場所が開き、上から雪崩れ込む沢山の人々。見せしめるように、脹相と真人が攻撃をしかけ益々カオスになる状況。これは呪霊達が五条をこの場に留めるための時間稼ぎだ。「ある程度の犠牲を前提として確実に俺らを祓いにくるだろうと。だが死者が増え生者も増え続けるこの状況ではその”ある程度”の天秤はもう機能しない」「貴様の想定している”犠牲”は呪霊に殺される人間であって、五条悟に殺される人間ではないからだ!!」と言う漏瑚と真人の狡猾さには感心さえしてしまう。

・Bパート:五条の領域展開

 だが、彼らの予想に反し領域展開をした五条。てっきり、”五条悟に殺されるという犠牲”も込みでの無量空処かと思っていたが、筆者の五条に対する考えが浅はかだったようだ。五条は非術師が廃人にならず且つ後遺症も残らないであろう0.2秒という時間を勘で設定したという…。凄すぎる…。更に改造人間だけに標的を絞り、1000体を299秒で鏖殺した。しかもこの299秒の間、特級呪霊達が目を覚ます可能性も考慮に入れていたとのこと…。一瞬でこの判断力、そしてその速度…五条の強さの片鱗を見た気がした。結局五条の勘通り2か月後に非術師たちは社会復帰を果たしたというのだから、もうすごいとしか言いようがない。土壇場の対応力がとんでもなさ過ぎる。

 1000体処理し終えた五条は、返り血を浴びて息もかなり上がっている。PVで気になっていたカットはここだった。五条にとっては、ホームの非術師を切り捨てて特級呪霊と改造人間を叩いてしまった方が楽だっただろうに。守ることを念頭に置いて戦うというのはかなり消耗するであろう。非術師を傷つけないように、1体を約0.29秒で処理し、さらにもしもの時の特級呪霊への対応も念頭に置きながらだからな…本当にとんでもない。

・Bパート:五条vs夏油

 改造人間を狩り終えた五条の目の前には、獄門疆…。うわぁ…となってしまった。五条は危険を察知し背を向けて距離を取ろうとしたタイミングで夏油が声をかける。第一声が「や、悟。久しいね」とは…なんとも汚い。このために夏油はこそこそ動いていたのだ。そして五条の「は?」の上ずった声がまたすごい。自分の手で殺したはずの親友の声を聴いて、色んな気持ちが混じった声色だった。「偽物?変身の術式?いや、本物……!」からの五条の脳内に溢れ出す3年間の思い出。そりゃあ足止めちゃうよな…と。 獄門疆の封印条件は五条の脳内時間で1分らしいが、もうそんなものとうに過ぎていただろう。1分どころじゃない。

 捉えられた五条は詰みを覚悟する。ここで筆者が夏油に対して最も気になっていたことについての核心に迫る問答が始まった。

五条「で、誰だよオマエ

夏油「夏油傑だよ、忘れたのかい?悲しいね」

五条「…肉体も呪力もこの六眼に映る情報はオマエを夏油傑だと言っている

五条「だが俺の魂がそれを否定してんだよ、さっさと応えろ!!オマエは誰だ!!

??「キッショ、なんで分かるんだよ」

??「そういう術式でね、脳を入れ替えれば肉体を転々とできるんだ。勿論肉体に刻まれた術式も使えるよ

??「夏油の呪霊操術とこの状況が欲しくてね、君さぁ夏油傑の遺体処理を家入硝子にさせなかったろ」

??「変な所で気をつかうね。おかげで楽にこの肉体が手に入った」(単行本11巻)

 ここはかなり衝撃的だった。このアニメ1期から出ている夏油はどうも本人ではないような気もしていたし、頭の縫い目も夏油の身体に何か細工された可能性があるのではないかと思ってはいたが、それでも頭を殴られるような衝撃だった。事実として描かれると本当に最悪すぎる…。誰よりも優しく善人であろうと自分を律し、五条達と一緒に青春の時間を送って、独りで悩んで苦しんで堕ちて、最期は親友に看取られた夏油を踏みにじられるような…非常に悔しい気持ちになる。筆者のヘイトが完全にこの謎の者に向けられた瞬間である。五条は乙骨の存在を告げて煽るも、「無条件の術式模範も底なしの呪力も、最愛の人の魂を抑留して得た力に過ぎない」と言いのける。本当にそれだけであろうか?ここについては考察パートでも詳しく述べていく。名前の挙がった乙骨くん、頼むで助けに来てくれぇ!!!

・Bパート:虎杖サイド

 突然「おわっ!??」と声を上げる虎杖。いきなり何??!っとなった。知らぬ間にメカ丸の顔のついたインカムのような物が虎杖の耳に着いている。そして五条が封印されたことが告げられたところで第33話は終わった。

考察・疑問など

・偽夏油の目的とは?そのシナリオは?

 夏油の身体を乗っ取った者の名前が明かされていないので何と呼べばいいのか分からないが、考察などを述べる上で「夏油の身体を乗っ取った者」と毎回書くのもまどろっこしいし、夏油じゃないのに夏油と言うのも気が引ける。何か仮にでも呼称を決めた方が分かりやすいと思うので、この場ではとりあえず”寄生体”と呼ぶことにする。この者が呪霊なのか人間なのかも不明だし、ちょっと表現に違和感があるかもしれないが、一旦寄生体と呼ばせて頂く…。

寄生体「そういう術式でね、脳を入れ替えれば肉体を転々とできるんだ。勿論、肉体に刻まれた術式も使えるよ

   「夏油の呪霊操術とこの状況が欲しくてね、君さぁ夏油傑の遺体処理を家入硝子にさせなかったろ」

   「変な所で気をつかうね、おかげで楽にこの肉体が手に入った」

   「心配しなくても封印はその内解くさ。100年…いや1000年後かな。

   「君強過ぎるんだよ。私の目的に邪魔なの」(単行本11巻)

五条 「ハッ、忘れたのか?僕に殺される前、その体は誰にボコられた?」

寄生体「乙骨憂太か、私はあの子にそこまで魅力を感じないね。無条件の術式模範、底なしの呪力。どちらも最愛の人の魂を抑留する縛りで成り立っていたに過ぎない。残念だけど、乙骨憂太は君にはなれないよ

寄生体「おやすみ五条悟。新しい世界でまた会おう」(単行本11巻)

 いつからかは不明だが、この者は”ある目的”のためにかなり長い期間動いていたことが察せられる。そしてこの目的を達成すると、”新しい世界”になっているという。それに際して、五条悟はどうしても邪魔な存在で抑制しておきたかったことがこの台詞から分かる。

 その五条悟をいつから危険視していたのかも分からない(産まれたその瞬間からかもしれない)が、かなりの期間をかけて入念な準備をしてきたことはこれまでの活動を見ても十分に伝わってくる。そのために夏油を利用したという点もあるので、夏油の身に起きたことも寄生体のシナリオだった可能性が大いにある。夏油が本当に報われなくて辛くなる。この“呪霊操術”と“五条悟”の唯一の親友という2つを持ち合わせていたが故、生きている間も死んだあとも地獄のような状況に取り込まれてしまったのだ。

 シナリオと言えば以前から気になっていた、虎杖が”指を拾った”と表現していた点。この寄生体は宿儺を引き込むことも目的の内にしているので、虎杖が宿儺の器であることを事前に把握して”拾うように仕向けた”としてもおかしくない。また、加茂憲倫の件も何やら糸を引いているような気がしてならない。アニメでは呪胎九相図の説明は偽夏油がしていた。かなり詳細まで知っているような口ぶりだったので、この加茂憲倫の残した最悪の史上最悪の術師という異名も寄生体による乗っ取り行動が故かもしれないし、そうでないにしろ”そう仕向けた”くらいの関与は十分にあり得そうだ。となると、呪胎九相図は今後において重要なキーワードになってくるであろう。今のところ脹相しか残っていないが、4番~9番までの存在も気になる。引き続き注目して追っていきたい。

 そして今回で裏付けができたが、呪霊たちに提示した2条件はやはり寄生体にとって達成しておきたい事であることが分かった。という事は、次のターゲットは両面宿儺である。しかし宿儺に関してはまだ目的がボヤっとしている。夏油は「両面宿儺、虎杖悠仁を仲間に引き込む」と言っていて呪霊たちは「宿儺復活」を唱えている。つまり、明確に夏油は宿儺復活を目指している…とは言っていない。最初は五条の封印のために宿儺を利用する可能性も考えていたが今やその必要もないので、別のタイミングで混乱した状況が必要になった時、宿儺&虎杖を”刺激”する可能性が残っているという程度だ。

夏油「戦争の前に2つ条件を満たせば勝てるよ」

  「五条悟を戦闘不能にし、両面宿儺、虎杖悠仁を仲間に引き込む」(単行本2巻)

夏油「宿儺の動きがさ、少し私のイメージとズレる。これは推測でしかないんだけど、恐らく学生の中に宿儺にとっての地雷がいる。それを踏めば最悪今回の行動全てが台無しになる

漏瑚「先に虎杖だけ攫ってしまえばいいだろう、どの道使う駒だ」

夏油「いや虎杖…宿儺自身もまた爆弾だ。私達にとっても高専にとってもね。刺激するタイミングはより混乱が求められる時にしたい

夏油「10月31日渋谷、五条悟の封印のために利用できるものは温存する」(単行本7巻)

真人「漏瑚、宿儺に触れて分かったけどとりあえず夏油のプランを軸に進めていいと思う。宿儺にはそれだけの価値がある」

漏瑚「指を全て集め、宿儺に献上する……か、結果儂らが全滅してもだな

漏瑚「いいだろう、100年後の荒野で笑うのは儂である必要はない。呪いが人として立っていればそれでいい」(単行本4巻)

 「夏油の呪霊操術が必要」と述べていた件も気になる。まさかとは思うが宿儺を取り込もうとしている…とか?そうだとしても何がしたいのかいまいちピンとこない。恐らくこの寄生体、かなりの年数を生きているように思えるのでアニメ勢が予想するにはまだヒントが無さ過ぎて想像するにも厳しいものがある。呪術廻戦ではちょくちょく呪術全盛の時代(=平安時代)の人物名が出てくるので、その時代の者なのかもしれない。もう少し過去の呪術全盛の時代のことが分かれば紐解くこともできるかもしれないが…その前に色々起きてしまいそうである。

 今の時点でぼんやり言えることを書いてみる。後にも述べるが、1000年後に五条を解放するだろうと言っていることと、虎杖が1000年生まれてこなかった逸材であることを関連付けると、宿儺が猛威を振った呪術全盛時代そして1000年という時間を経て産まれる宿儺の新たな器…これを繰り返すことが目的だったりするのだろうか?あとは、宿儺vs総力をあげて戦う術師たちのその状況をまた再現したい…とか?繰り返すことに何のメリットあるのかは考えもつかないのでただ言ってみただけだが…。呪術廻戦という名前の作品だけあって、呪術+廻る戦いということでこの作品の核心に触れられる大事な部分な気がするのだ。なんとなく…。

五条「菅原道真の子孫だった。超遠縁だけど僕の親戚!!

乙骨「え誰?」

真希「日本三大怨霊の一人」

パンダ「超大物術師だ」

棘 「ツナ」(単行本0巻)

五条「呪術全盛の時代、術師が総力をあげて彼に挑み破れた。宿儺の名を冠し、死後呪物として時代を渡る死蝋さえ僕らは消し去ることができなかった。紛うことなき呪いの王だ。」(単行本1巻)

与 「それは平安時代、蘆屋貞綱によって考案された。呪術全盛の時代、凶悪巧者な呪詛師や呪霊から門弟を守るために編み出された技。一門相伝、その技術を故意に門外へ伝えることは縛りで禁じられている。それは”領域”から身を守るための弱者の”領域”。シン・陰流 簡易領域」(単行本10巻)

・偽夏油の協力者は彼の秘密を知っているのか?

 寄生体は夏油の姿をしているが、本体を知っている者はいるのだろうか?あくまでも夏油として動いているのだろうか…。特に、”おかっぱ頭”のキャラとの関係性がいよいよ気になってくるところだ。

・特級呪霊達の今後は?

 まだ夏油に取り込まれていないことが前提になるが、彼らの未来も怪しくなってきたように思える。主従関係なく利用できる間はそのままにしといて、チャンスがあれば戦力として”完全な手駒”にされる可能性が物凄く高いのでは。チャンスと言うのは、特級呪霊達が良い感じに削られて弱っている時のことである。やはり、第31話で言っていた「場合によっては今この場で」というのは、「今この場で取り込んでしまおうか」ということなのかもしれない。敵である呪霊でさえ不憫に思えてくる。この寄生体、とことん厄介な相手である。

夏油「……効いてるね」

夏油「(やるね彼。一時的だろうけど特級クラスの呪力出力。真人対策もしっかりしてきたわけだ」」

夏油「場合によっては今この場で……」(単行本10巻)

・真人の多重魂について

 名前の通り、複数の人の魂を操る技に見えるが…真人の手元は塊になっている…。ここで気になったのはオープニングSPECIALZのCDジャケットだ。敵味方関係なく塊になって虎杖に向かっている図だったのだが…こうならないよね?!大丈夫だよね?!と心配になってしまった。

・獄門疆はいつ解かれるのか

 物語的に今後五条は一切登場しませんだなんていう事はなさそうだし、100年以上放っておかれることもなさそうなので、しばらくしたら五条の封印は解けると予想する。その解けるタイミングがいつなのか非常に気になるところだ。いくつか考えられるパターンを挙げてみる。

 ・寄生体が解く:言った通りにというパターンだ。この者の目的が達成され次第、五条は解放される。

 ・五条が解く:呪力も使え無さそうだし力も抜けると言っていたのであまり考えられないが、五条自身がどうにかして封印を解いてしまうというパターンだ。最強だからなんとかできませんかね…という期待を込めて。

 ・他の誰かが解く:寄生体でも五条でもない、他の者が封印を解くというパターン。獄門疆の封印解除条件が不明なので、何とも言えないがこれもあり得るだろう。

・封印が解かれた後は?

 寄生体は「新しい世界でまた会おう」と言っていた。“また会おう”なんだなと意外に思った。もうこのまま封印しておくつもりだろうと予想していたからだ。何故“また会おう”なのだろうと少し気になってしまう。五条は間違いなくこの寄生体を始末しにかかるであろうし、そもそも「君強過ぎるんだよ」と言って五条を警戒しここまで念入りに準備して抑制したのだ。自身に危害を加える恐れがあるのに何故解放するのだろう?

 恐らく、解放しても自身にとってまずい状況にならないから、わざわざそうする訳だ。自分が五条より強い立場にいる予定なのでOKなのか、それとも新しい世界になっていれば自身に危害を加えられようと何も問題はないのか…。むしろその世界に五条が必要だから解放する可能性すらある。

 先に述べたが、仮設である「呪術全盛の時代の再来、そして宿儺が猛威を振る状況の再現」を正として考えてみる。寄生体としてはその状況を鑑賞することが目的くらいに仮置きしてみる。思惑通り宿儺が復活してめちゃくちゃになった世界で開放されたとしたら、五条の使命は宿儺を止めることになるはずなので、一旦寄生体に対する優先度が下がるであろう。そこを見越しての解放かもしれない。まぁ根拠のない妄想であるが…。

・夏油の身体を乗っ取った寄生体は何者なのか?

 100年、1000年後も生きているつもりでいるこの寄生体、何者なのだろうか。肉体に限界が来たらまた新しい肉体へと移り変わるみたいな要領で、実質不死のような感じだろうか。なんか天元みたいなタイプだなと思ってしまった。

・脹相の立場は?

 筆者は完全に呪霊扱いしていたが、五条が「呪霊じゃないな」と言っていた。そういえば虎杖もある意味同じような状態なので(肉体の主導権は基本虎杖だが)、脹相を呪霊と言ってしまうのはちょっと配慮の欠ける表現だったのかもしれない。というか、そもそも呪胎九相図を産んだ特異体質の女性は、呪霊と人間の混血の異形の子を宿していたというし…事実、呪胎九相図自体がどちらとも言えない存在だ。

ナレーション「母の記憶はない。人間にも術師にもとくだん恨みがあるわけではない。150年お互いの存在だけを頼りに封印を保ってきた

脹相「呪霊側につくぞ」

壊相「大丈夫かな、アイツら胡散臭いよ兄さん」

脹相「呪霊が描く未来の方が俺達にとって都合がいい。ただそれだけの事だ。受肉の恩は忘れろ。

脹相「いいか弟達よ。懐相は血塗のために、血塗は俺のために、俺は壊相のために生きる。俺達は三人で一つだ」(単行本7巻)

 脹相たちの立ち回りを振り返ってみると、彼らの行動理念は”兄弟たちがお互いを想って生きること”それのみで、他には特に執着はなさそうだ。五条との戦闘シーンを見ても手を組んでいる手前、最低限攻撃はしているのだろうな程度で、漏瑚たちのような情熱は感じられない。過去に壊相が言ったように呪霊側は胡散臭いので(特に偽夏油が)、彼の理念に反する部分が垣間見えた瞬間恐らく協力関係にヒビは入るだろう。

 そして先程述べた呪胎九相図は呪霊ではないと言う件、宿儺ももともと人間だったと言っていたなと思い出した。特級呪霊達が人間を毛嫌いし、身を削って呪いの時代に変えようと宿儺復活に尽力しているが、そもそも彼が人間だったという事実はなんとも皮肉の聞いた話である。

五条「両面宿儺は腕が4本、顔が2つある仮想の鬼神。だがそいつは実在した人間だよ。千年以上前の話だけどね」(単行本1巻)

・100年後、1000年後の根拠は?

 寄生体は何故「100年…いや1000年後かな」と言ったのだろうか。なんとなく頭に浮かんだ台詞を下記に記載しておく。呪術廻戦でいう1000年間と言えば、宿儺の器が生まれてくるのに必要な時間だ。ここと何か関連しているような気もしなくもない。五条については、何年ぶりの~と言う稀有な存在ということで関与する可能性もあるので拾ってみた。

寄生体「心配しなくても封印はその内解くさ。100年…いや1000年後かな。」(単行本11巻)

五条「確定だね、肉体の耐性だけじゃない。宿儺相手に難なく自我を保てる。千年生まれてこなかった逸材」(単行本1巻)

甚爾「うん百年ぶりの六眼と無下限呪術の抱き合わせ。五条が近くにいる限り星漿体はまず殺せない」(単行本8巻)

・夏油を乗っ取った寄生体の乙骨に対する解釈は合っているのか?

 何気に初めて乙骨の能力が開示された。筆者は、恐らく寄生体の理解は合っているものの、十分でないと思う。何故かというと寄生体が知らない情報が一つあるからだ。

五条「忘れたのか?僕に殺される前、その体は誰にボコられた?」

寄生体「乙骨憂太か、私はあの子にそこまで魅力を感じないね。」

寄生体「無条件の術式模範、底なしの呪力。どちらも最愛の人の魂を抑留する縛りで成り立っていたに過ぎない。残念だけど、乙骨憂太は君にはなれないよ」(単行本11巻)

 寄生体の知らない情報とは、”乙骨が菅原道真の子孫であり、五条の遠縁の親戚であること”だ。彼の強さは最愛の人の魂を抑留する縛りで成り立っていたと言っているが、それにしても乙骨の得た力は大きすぎると思うのだ。並みの術師ではここまでならなかったと思う。思うに、この血筋が乙骨の強さのベースを作っていると思う。あと正直、これまでがこの寄生体の思うがまま過ぎて腹が立つので、1つくらいは予想が外れて欲しいという気持ちも大きい。乙骨は渋谷事変で参入してくれるのだろうか…五条先生のようにはなれなくとも、乙骨の活躍が早く見たいものである。

五条「菅原道真の子孫だった。超遠縁だけど僕の親戚!!

乙骨「え誰?」

真希「日本三大怨霊の一人」

パンダ「超大物術師だ」

棘 「ツナ」(単行本0巻)

・寄生体とは誰が対峙するのか?

 裏ボスがいる可能性もなくもないが、この寄生体がラスボスと言われても良いくらい謎が深い&厄介だ。この者をどうにかするには相当骨が折れそうである。最終的には誰が戦うのだろう…。筆者としては五条に仇を討ってほしい気持ちもあるが、彼に二度も親友を殺させたくない。是非決戦の際は、別の人にお願いしたいところだ。最後まであの姿でいる保証もないが...。

 先も述べたが、この寄生体はかなりの時間この世の中を見てきて自分の目的を達成するために暗躍してきたと思われる。情報量も情報網もとんでもなく多く広いであろう。となると、この者が把握していない人物や、予想できないパターンを持っている人物が有利に立てる可能性が大きいであろう。勿論まだ登場していないキャラクターの可能性もある。寄生体が知らないor寄生体の予想を超える可能性のある人物と言えば、五条、乙骨、虎杖、秤(名前しか出ていない)辺りだろうか…。

五条「皆優秀だよ。特に三年 秤、二年 乙骨、彼らは僕に並ぶ術師になる」(単行本2巻)

・そもそも20分の足止めは必要だったのか?

 夏油の姿さえあれば、五条を1分間その場に留めることは十分にできたと思うのだが…。足止めするにしても20分も漏瑚たちにあそこまで粘らせる必要はあったのか疑問に思う。むしろ漏瑚たちを五条にぶつけて体力を削り、良いところで取り込む気だったとか…?

・メカ丸はどういう状況なのか

 死を仄めかすような表現で終えた真人vsメカ丸戦だったが、こうして虎杖に連絡を取っている。一体どういう状況なのだろうか?実は生還していたのか、もう亡くなっているorそれに近い状況だが余力で連絡手段を残していたのか?まず前者だが、あの心抉るエピソードを描いた芥見先生がそんなことするだろうか?としても後者もなんだか腑に落ちない。いずれにせよ、五条の状況を素早く連絡してくれたミニメカ丸は大変グッジョブである。

おまけ:五条の存在する記憶、東堂の存在しない記憶

 東堂の存在しない記憶が先に出ているせいで、五条の脳内を駆け巡る夏油との記憶のシーンにややノイズが走るのが本当に東堂お前…という気持ちになる。アニメでは大丈夫だったのだが、単行本で読んだときの「そして五条悟の脳内に溢れ出す、3年間の青い春」という部分で東堂が脳裏を過ってしまった。何故なら、東堂のあのシーンも「瞬間、東堂の脳内に溢れ出した存在しない記憶」と同じような表現だったからだ。芥見下々先生、絶対ワザとでしょう…。

■次回、第34話について

 予告を見る限り、本当の意味で五条が封印されてしまうであろう。それまでにどういうやり取りがあるのかも気になるところだ。また、ミニメカ丸からの連絡を受けてどう虎杖たちが動くのかも注目ポイントであろう。虎杖本人としては真っ先に渋谷駅の副都心線ホームに向かいたいはずだ。何らかのバトルがあるかもしれない。今回に引き続き、非常に楽しみである。

芥見先生のコメント

■アニメーターさんの投稿

 

以上。