【呪術廻戦】アニメ勢による2期 第29話「玉折」の感想など

 8/4(木)に呪術廻戦2期第29話が放送されました。感想など、まとめていきたいと思います。

 

※下記より、アニメ呪術廻戦・アニメ放映分の単行本のネタバレ及び、筆者の感想&考察要素を含みます。※

 

参考)単行本で言うとどの部分か?

 単行本9巻の、第76話 玉折p.113~第79話 これからの話p.176までが第29話の範囲。

 

ファーストインプレッション

 今までで一番キツいエピソードだった。心が重たくなる…。後ほど述べるが、夏油の心情を表すような演出がすごく凝っていて見ている方がどんよりしてくるくらいだ。五条も一体どんな気持ちで夏油と共にいて、追いかけ、そして教師を目指したのか等を考えると何とも言えない気持ちになる。特に最後の小1恵との出会いで回想が終わり、時間軸が現実に戻ってくるという部分で、五条先生に対する色んな気持ちが溢れてしんどくなる。呪術廻戦において、五条先生も主人公の1人なのかもしれないと思った。

 29話を見た後にオープニングを聞くと、「どんな祈りも言葉も近づけるのに届かなかった」「きみを呪う言葉がずっと喉の奥につかえてる。また会えるよねって声にならない声」という歌詞が精神を抉ってくる…。うう…。 あと今回絵の感じやカメラワークが特に素敵で、やっぱりお洒落な作品だな~~と感動。

 

ストーリー構成

 ほぼ原作通りの構成であった。

 

シーンごとのメモ等

・無下限呪術の試行

 今回は不穏な、アバンなしのOPスタート。Aパートは五条の能力解説とも言えるシーンから始まった。せっかくなので、出てきた内容を箇条書きにまとめておこうと思う。

-達成orほぼ達成したこと

・無下限ガード

・反転術式の習得

・掌印の省略

・赫と蒼の各々複数同時発動

-課題

・無下限ガードのレベルアップ(毒物の選別等)

・領域と長距離の瞬間移動(高専を起点に障害物のないコースを事前に引くことで可能か?)

-(ほぼ)オート無下限ガードの仕組み

・自己補完の範疇で反転術式を回し続ける→無下限呪術を出しっぱにすることによる脳の負担をカバー

・物体の危険度を選別し、危険なものは無下限ガードで自身を守る

 天内護衛任務の1年後の話だが、完全に能力を自分の物にしている感がすごい。こりゃ最強だわ。しかもちゃんと自分の術式の特性を理解した上で更なる高みを目指しているし、達成したことや今後の課題などが明確である…。うーん、天才か?

 恐らく、1期の時間軸(2018年)の五条は上記の課題を乗り越えているだろうし、他の技の習得もしているかもしれないし、何ならもっと最強になっちゃうかもしれない…。

 

・やつれていく夏油

 更に急成長していく五条の傍ら、夏油は暗い雰囲気だ。五条が最強になり、今まであっていた歩調も合わなくなってきて孤独になってしまったようだ。護衛任務の一件から1年、ずっと独りで思い詰めていたことが分かる。そして、2期の第一話冒頭で先出されていた台詞が来る。一人で電車に乗る夏油、教徒の拍手、呪霊の取り込みの3カットが夏油の状況を強調していて苦しい。夏油は誰にも分からない苦しみをずっと抱えて耐えてここまでやってきた。非術師のために。術師としての責任を果たさねばと自分に言い聞かせるも、シャワーの音がだんだん拍手の音と重なるのがまた辛い。そして「猿め」という言葉が出る。

 シャワーの後に座っている場所は、劇場版でも登場した場所である。夏油は、呪術師として生きていくことを決めた日からずっと苦しかったのだろうなと思った。

夏油ただこの世界では、私は心の底から笑えなかった(劇場版呪術廻戦0より)

 

・灰原との会話

 「猿め」と本音が零れた夏油の元にやってきたのは、後輩の灰原。陰鬱な雰囲気を打ち破るような明るい雰囲気で夏油に話しかける。遠出任務のお土産は甘いのとしょっぱいのとどちらが良いかと問われ、「悟も食べるかもしれないから甘いのかな」と答える夏油。絶対本人はしょっぱい派だろうな……と頭を抱えてしまった。しかもアニメでは口元が隠れているが、単行本では柔らかい表情をしている。こんな状況なのにまだ他人思いな夏油よ。そしてやっぱり夏油にとって五条は特別な存在なのだなとも思った。

 下記のやり取りも、夏油は自分が辛いから聞いたというよりも本当に灰原を心配しているようだというのが櫻井さんの演技から感じ取れた。可愛い後輩が自分のように思い悩んだり苦しんだりしていないか心配だったのではないだろうか。だが、灰原のからっとした返答に夏油もそういう考え(=深く考えすぎず、とにかく自分のできることを頑張るのは心地のいいこと)もあるな~と新しい気付きを得たようだった。揺れ動く夏油の気持ちはきっと天秤のようで、非術師が憎いという気持ちを緩和するように灰原の意見が落ちてきたのではないだろうか。正直、この時点の夏油はまだ引き返せただろうなと思う。

夏油「灰原、呪術師やっていけそうか?辛くないか?」

灰原「そー…ですね、自分はあまり物事を深く考えない性質なので」

灰原「自分にできることを精一杯頑張るのは気持ちがいいです

夏油「そうか、そうだな

 

・九十九との会話

 そんな少し希望も見えたところで現れたのが九十九由基。九十九と言えば、東堂の回想にも登場した女性だ。喋り方や態度が胡散臭くないので、良いお姉さんが来た!雰囲気が良くなるかしら~と思ったのだが、虚しくも九十九の言葉が夏油を反対方向にぐいと後押ししてしまった。やめてくれ~。

 話の入りは、呪霊の生まれない世界を作るという原因療法がしたいのだという九十九の主張から。夏油の気を引くには最高の主張だと思う。そして、現在目指しているのは「全人類を術師にすること」と述べる。夏油は咎められる前提と言った様子で「じゃあ非術師を皆殺しにすればいいじゃないですか」と呟く。九十九は意外にもその意見を肯定し、もっとも簡単だとまで言う。ここで雨音と拍手が混じった音が流れる。また夏油の中で揺らぎが生じたのだろう。

 夏油は非術師を見下す自分、それを否定する自分の2つが渦巻いて何が本音か分からないのだと吐露し、それに対して九十九は「どちらも本音じゃないよ」「どちらを本音にするのかは、君がこれから選択するんだよ」とだけ告げて立ち去る。ここで、「非術師を見下す君(近くの非常口を指さす)、それを否定する君(先が見えない長い廊下を指さす)」という演出が入るが、ある意味簡単で手軽な選択を強調されたような印象を受けた。

 そして九十九が最後に残したのは、「星漿体のことは気にしなくていい。あの時もう1人の星漿体がいたか、既に新しい星漿体が産まれたのか、どちらにせよ天元は安定しているよ」という言葉だ。ちょっと…いや、だいぶデリカシーに欠く言葉ではなかろうか。悪気の有無は一旦置いといて、九十九さんやめてよ~というのが正直な感想。

 

・灰原の死

 ここから夏油の選択をどんどん急かすようなイベントが立て続けに起こる。始めは灰原の殉職だ。灰原は下半身が欠損した状態で運び込まれていた。七海が怒り、やるせない思いを椅子にぶつける。任務は五条が引き継いだと聞いた後に「もうあの人一人で良くないですか?」と吐き捨てている。「術師というマラソンゲーム。その果てにあるのが仲間の屍の山だとしたら?」という独白でこのシーンは終わる。ほぼ本音が決まりつつある状態であろう。

 

・旧■■村

 夏油が任務先で”行動”を起こしてしまったというのが分かる、報告書のカットから始まる旧■■村のシーン。二本のろうそくが灯してあるが、片方はもう溶けきる寸前である。夏油の2つの思いの暗喩であろう。牢に閉じ込められた姉妹と、その姉妹を罵倒する村人と思しき人間。村人の声は霞がかっている。なんというかこう…怒りや憎しみが振り切った状態なのだろうというのが伝わってくる。2つの影のうち、片方がくっきりしており、もう片方はボケている。「非術師を見下す君、それを否定する君。どちらを本音にするのかは…」という九十九の台詞が脳裏に響き、片方のろうそくは溶けきり消え、「君がこれから選択するんだよ」という台詞と共に影が1つになる。ここの一連の本音の選択の表現がとてもよかった。

 

・夏油と五条と硝子

 夏油の件を聞き、怒り混乱する五条。五条は夏油が痩せたことには気が付いていたが、夏油が思い悩んでやつれていたことは全く知らなかったであろう。五条が他人の変化に敏感じゃないというのもあるのかもしれないが、それより一緒に過ごす時間が減っていたことや夏油が周りを巻き込まぬように上手く取り繕っていたというのが大きいだろう。信じられないし信じたくないだろうし…こんな訳の分からぬ感情の中、突き付けられた処刑対象という事実への混乱などなど五条のぐちゃぐちゃの心情が中村さんの演技も相まって伝わってくるようでしんどいシーンだった。

 ところ変わって、硝子が新宿にいるシーンへと場面転換する。ライターを探す硝子の前に現れたのは処刑対象となった夏油。隈も取れて微笑んでおり、悪い意味で憑き物が取れたといった様子だ。硝子はあっけらかんとした態度で(硝子さん、肝座ってるな…)、事件の真相が事実なのか、またその理由を聞いて「ははっ意味分かんねー」と言いながら堂々と目の前で五条に通報。夏油は何故硝子の前に現れたのかな。最後の挨拶といったところだろうか。

 街中を歩く夏油に「説明しろ、傑」と声をかける五条。第一声が割と柔らかい声だった。夏油から直接聞くまでは…という気持ちがあったのかもしれない。またここの過行く歩行者の中、2人立ち止まって向き合わずに言葉を交わすシーンが何と言ったらいいか分からないがとにかくすごくよい。道路から見た視点で時々自動車が通り過ぎるのも素敵な演出だと思った。離別する前最後の2人だけの時間という感じがするからだろうか。この2人だけ時が止まっているようだ。そして夏油が振り返って劇場版でも出たこの台詞を述べる。

夏油「君は五条悟だから最強なのか?最強だから五条悟なのか?」

夏油「もし私が君になれるのなら、この馬鹿げた理想も地に足が着くと思わないか?

夏油「生き方は決めた。後は自分にできることを精一杯やるさ

 雑踏に紛れて立ち去ろうとする夏油。完全に夏油の意思で離反し、「非術師を末梢して術師だけの世界を作る」という目的が分かった以上、五条は夏油を仕留めなければならない。撃とうとするが、五条は殺めることを選ばなかった。べき論で言ったらここで止めておけば…と思うが、そりゃできなくて当然であろう。高校生でしかも親友である友を自分の手で…なんて無理な話だ。

 

 高専に戻った五条は夜蛾と言葉を交わす。夜蛾も五条と同じ気持ちだろうし、夜蛾も五条の立場だったら同じ選択をしたのだろうなと思った。またこの会話から、五条が教職を目指すきっかけがこの一連の件であったことが分かった。

五条「先生、俺強いよね?」

夜蛾「あぁ、生意気にもな」

五条「でも俺だけ強くても駄目らしいよ

五条「俺が救えるのは他人に救われる準備がある奴だけだ

 五条が救いたかったのは誰だろう。夏油、天内や黒井、灰原を始めとした殉職した術師、はたまた呪いの巻き添えを食らってきた非術師だろうか?その全てだろうか。五条が救えるのは”他人に救われる準備のあるやつ”だけで、それ以外の人は最強である自分にも救えないと言っている。より多くの人(術師も非術師も)を救えるように、五条は自分以外の強い術師を育てようと決心したのではなかろうか。

 

・夏油と五条、それぞれの第一歩

 夏油はなんと孔と接触しており、ある宗教団体を利用して呪いと金の集めることにしたようだ。また。袈裟を見に纏い、見慣れた胡散臭い教祖(?)となり替わった。しかもこれ、五条袈裟ってやつらしい…へ、へぇ…。登壇した夏油はまぁ水を得た魚のように生き生きと胡散臭いお坊さんを演じ、「私に従え猿供」と吐き捨てる。ここの胡散臭い夏油の動き、すごかった。すごく胡散臭かった…。身振り手振りがまさしく怪しい人という感じで素晴らしい。

 一方五条は恵に会いに行っていた。五条は恵に父親のことを告げ、今後についてどうしたいか問う。そして禪院家に行かないという選択を提示する。一人称も僕に代わっていて、小1の恵に気を遣った喋り方をしているのが分かる。一人称については、夏油の「歳下にも怖がられにくい」というアドバイスがあったからだろう。喋り方も、「禪院家は才能(=術式)大好き」と言ったりと小さい子が取っつきやすいように工夫している。(そのあと「で、そのお父さんなんだけど僕がころs…」まで言ってたので根本は変わってないなとは思ったが…笑 五条に対して恵のしっかりした態度よ…。)

 この時点で五条が明確に教職を目指そうと思っていたかは定かではないが、五条にとって恵は「俺だけ強い」を打破するための最初の弟子ということは間違いなさそうだ。これが何年何月の話なのか不確かだが、夏油の一件が2007年9月でそこからそんなに時間は経っていなさそうなので、五条と恵はもう10年くらいの付き合いという事になりそうだ。

 「強くなってよ、僕に置いて行かれないくらい」のところで涙が出た。そして1年ズの呼びかけにより、眠りから覚める五条。わちゃわちゃする1年ズを横目にクスリと笑い、「何笑ってんすか」「別に♡」のやり取りで終わる。ここでも自然と涙が出た。よく見ると五条の下瞼が若干赤いような気もする。夢(高専時代)を見ながら泣いていたのだろうか。とすると、オープニングの滴の演出も何の滴なのか結びついてしまって、また涙腺が…。劇場版の時も五条の台詞で涙が出たが、どうも私はこういうキャラクターに情が乗りやすいのかもしれない。

 五条の心境を全部察するのは不可能だが、受け持ちの3人の生徒が付いてきてくれていることに頼もしさや愛おしさを感じているのではないかなと思った。(ちなみにこの3人は八十八橋の一件で1級術師に推薦されている状況。)ほんとどんな気持ちで教師やってるんだろう…背負っているものが大きすぎるのに、生徒を含め周りにはそれを感じさせないところがま~~泣けてくる。懐玉・玉折を見た後に1期や劇場版を見返したら五条先生の捉え方がまた変わると思うので、渋谷事変放送までにまたもう一周してこようと思う。

 

最も印象に残った部分:演出

 夏油が揺らいでいる時に鳴り響く、拍手の音。夏油が本音を選択した時のろうそくや影の演出。この夏油が苦しみ、迷い、葛藤し、決断するまでの演出がすごく凝っていて丁寧で、見ているこちらもしんどくなるような演出だった。言葉以外のメッセージが絵や音にたくさん込められていて、とても見ごたえのある1話である。呪術廻戦は1期から1話1話本当に魂込められて作られているのが伝わってきて、印象に残っているシーンや回等挙げたらキリがないくらいだが、今回の29話は今後他のアニメを見ていく中でも一生忘れないだろうなと思う。

※メモ)脚本:瀬古浩司さん、絵コンテ:御所園翔太さん、演出:なかがわあつしさん、演出協力:新沼拓也さん&山崎爽太さん

 

その他気になること等

 気になることは山ほどあるが、多くは懐玉・玉折まで見た上でのという話になるので別の記事にまとめていこうと思う。主に、夏油・呪霊サイド・宿儺などを中心に、今後のストーリーに対しての構えを取っていきたいと思っている。ということで今回は簡単に…。

・九十九由基

 先程も述べたが、九十九と言えば1期の第20話以来の登場である。と言っても、前回登場した際も小3の東堂に「どんな女がタイプかな?」と言って接触してきただけで、大きくストーリーに絡むことはなかった。東堂と九十九の関係も気になる。子弟関係なのだろうか…。とにかく東堂が九十九の影響をバチバチに受けているのは、第一声の台詞で容易に想像できる。

 そして今回は夏油と灰原の目の前に現れた。夏油と理想の世界、そして実現方法について言葉を交わす。結果、九十九の「全人類が術師になれば呪いは生まれない」「それは”アリ”だ」「どちらを本音にするのかは君がこれから選択するんだよ」という言葉が夏油に大きな影響を与えてしまったことは確かだろう。あの状況であの言葉をかけたということは、堕ちるという方向に夏油の背中を押してしまったといっても過言ではない。

ここで気になるのは、①夏油に接触した理由②夏油にかけた言葉の意図の2点である。①は全く不明。高専関係者でもなさそうで&普段は海外をプラプラしているらしいので、何等かの目的があって夏油に会いに来たのだろうということは可能性としては大きいのではないだろうか。②については①にもよるが、一旦良いor悪い意味で接触した場合で分けて考えてみようと思う。前者の良い意味で…の場合、「たまたま高専に来たら夏油がいたので偶然会話した」「単に夏油という個人に興味があったため」「自身の目指す原因療法の協力者を募るため」「夏油のメンタルケアの依頼を受けたため」等が考えられる。悪い意味の場合、「非術師の末梢を志すように誘導するため」「自身の目的のために夏油を利用するため」等があるだろうか…。

 まぁ正直、良い意味で接触した場合でも、「じゃあ、非術師を皆殺しにすればいいじゃないですか」と夏油が言った時点でもっと夏油の心に寄り添って話を聞いてあげてから言葉をかけるべきだったと思うので、悪意がないとしたら九十九は他人の機微にかな~り疎いタイプと言える。夏油が何に悩んで苦しんでいるのか分かっていたら、別れ際に「星漿体のことは気にしなくていい。あの時もう1人の星漿体がいたか、既に新しい星漿体が産まれたのか、どちらにせよ天元は安定しているよ」なんて言葉は出ないはずだ。(これ結構酷い言葉である。)悪意があるとしたら、まぁ~~上手いこと夏油を闇堕ちさせたなという感じである。九十九と接触した後に、夏油の選択を迫るように辛酸なイベントが立て続けに起きているのも気になる。偶然かもしれないし、偶然だとしても夏油が不憫でならないが、何か意図的なものがなかったのかという点で少し引っ掛かる

 灰原が「大丈夫ですよ。悪い人じゃないです。人を見る目には自信があります」と言っていたので、悪い人じゃないと思いたいが、懐いていた夏油が後に離反したとなると何だか雲行き怪しいような。ここでごちゃごちゃ考えても仕方がないが、どちらにせよ、今後もストーリーに絡んでくる重要人物であるに違いない

 

以上。